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ニ指推鍼法 ( にしすいしんほう ) とは

【 二指推鍼法の技法 】

「二指推針法」とは、鍼管を使用せず、母指と示指の「二指」を用いて針を推し進めるように穿刺刺入する刺鍼技術です。この刺針法は、製造技術の進歩によって向上した日本製鍼灸針の高度な品質と性能に依存して実現した新しい刺鍼技術であり、この技法を用いることで、日本製鍼灸針の潜在的な性能を、従来以上に引き出すことが可能となります。また、この刺針法は、北川式美容鍼灸の「要」として位置付けられる技法であると同時に、この技法を用いることが、北川式美容鍼灸の大きな特徴でもあります。

【  二指推針法の手法と特徴 】

二指推針法の手順は、はじめに母指と示指で鍼灸針の鍼柄をしっかりと固定し、次に針尖を刺入部位の皮膚に軽く当て、続いて刺入角度を決め、母指と示指で刺入する方向に対して忠実に圧力をかけて刺入するという極めて単純な技法です。
日本の臨床現場と教育現場では、針を刺入する際に「鍼管」と呼ばれる管を使用する「管鍼法」が広く普及し採用されているのに対し、中国をはじめとする諸外国では、鍼管は使用されず、「速刺法」あるいは「快速刺入法」と呼ばれる技法が、一般的に用いられています。この技法は、針の穿刺を円滑に行うことと穿刺による疼痛を軽減するために、勢いと速度によって針を迅速に刺入する技法です。弾入によって針をすばやく刺入することから、中国の刺針法の分類では、日本の管鍼法も速刺法に類する技法として位置づけられています。つまり、日本においても、中国においても、従来の鍼灸針の穿刺は、勢いと速度に依存して行われてきたということです。
一方、二指推針法は、鍼管を使用しないという点では、中国の速刺法と共通していますが、針の穿刺が勢いや速度に依存して行われることはありません。穿刺の過程が、比較的にゆっくりとした速度で自然に行われることが、速刺法や管鍼法とは異なる二指推針法の大きな特徴です。二指推針法は、針を持って針尖を皮膚に当て、皮膚に押し込むように鍼を刺すというだけの極めて単純な刺針法です。このような技法が成立するのは、前述した通り、製造技術の進歩によって日本製鍼灸針の性能(針尖の切れ味)が大幅に向上したことが理由であり、現代の進化した日本製鍼灸針の性能を有効に活かすことで、穿刺を迅速に行うことをしなくても、穿刺による痛みは大幅に軽減することができるのです。このように、現代の日本製の鍼灸針の性能は、一定の技術と要領を身に付けさえすれば、針尖を皮膚に押し付けるだけで、極めて円滑に刺入を行うことができる水準に達しています。二指推鍼法の技法は、新しい鍼灸針の性能の賜物であるということです。

速刺法による刺入は、「投げ入れ」と表現されるように、一定の力と速度をもって、皮膚から少し離れたところから、刺入部位の皮膚をめがけて「投げ入れる」ように刺入します。一方、二指推鍼法による刺入では、予め針尖を刺入部位の皮膚の表面に軽く当て、針尖が表皮に接触している状態で、刺入角度を決めて「押し込む」ように刺入します。このように、予め「針尖を皮膚に接触させる」ということも、二指推鍼法の原則であり特徴です。また、従来の刺針法では、勢いや速度に依存して刺入が行われる場合がほとんどでした。しかし、進化した日本製の鍼灸針は、鍼灸師の道具としての性能(針尖の切れ味)が極めて高いため、勢いや速度に依存して刺入する必要はもはやなくなりました。速刺法や管鍼法による穿刺が「ブスッ」というイメージだとすれば、二指推鍼法は「ス〜」というイメージでソフトに刺入することが特徴です。

【  北川式美容鍼灸で使用される針  】

■ 針の太さ

顔面部は全身の中でも皮膚が薄く、数多の毛細血管が分布しているため、太い針は使用に適しません。北川式美容鍼灸における顔面部の施術では、皮膚の特性、刺針する部位、目的などの条件に応じて、0.14㎜(0番)〜0.20㎜(3番)の針を使用しています。

■ 針の長さ

美容を目的とした顔面部の刺針では、深度の深い刺針が要求されるケースはほとんどありません。また、必要以上に針体の長い針を用いた場合には、針の柄の荷重によって、刺針部位に痛みや不快感が感じられる場合もあるため、必要以上に針体が長い針は使用に適しません。そのため、北川式美容鍼灸における顔面部の施術では、一部の場合を除けば、原則として適度に針体が短い針を使用しています。

■ 短針と刺針法

上記のような理由から、美容を目的として顔面部に刺針を行う場合には、北川式美容鍼灸では、主として「短針」と呼ばれる針体の短い針を採用しています。ごく最近まで、日本では短針は一般的には使用されていませんでした。そして、そのために、以前は、国内で短針を入手することも容易ではありませんでした。しかし、美容鍼灸の普及と需要の拡大に伴い、昨今では、一部の国内メーカーが、ディスポーザブル(使い捨て)の短針を発売するようになり、短針は日本国内でも急速に普及し始めてします。また、顔面部は形態的に凹凸が顕著であり、また、横刺や斜刺で刺針する場合も多いことから、日本で一般的に行われている「管鍼法」が、必ずしも理想的な方法であるとは言えません。短針を用いて顔面部に刺針を行う場合には、北川式美容鍼灸では管鍼法を用いず、独自の二指推鍼法を用いています。

鍼灸治療と美容鍼灸を学ぶことを目的として、北川毅はしばしば中国を訪れていますが、2004年には、中医美容学の権威である于璟玲(う・けいりん)氏を北京に訪ねたことがありました。中国では、当時から既に顔面部の美容専用の短針が存在していました。于先生は、顔面部の刺針に短針を愛用しておられ、短針が顔面部に対する刺針における合理的な道具になることを、この時ご教授くださいました。しかし、前述した通り、残念ながら、当時の日本では、短針を入手することは困難でした。2006年に、北川毅にとっては「画期的」ともいえる出来事が起きました。国内における美容鍼灸の普及と需要の拡大を見込んだセイリン株式会社(以下 セイリン)が、美容市場に向けてディスポーザブルの短針「Dタイプ」の販売を開始したのです。

■ 短針と鍼管不要論

「画期的」というのは、ディスポーザブルタイプの短針が国内で発売され、入手が容易になったということだけではありませんでした。「画期的」と形容すべきは、むしろ、この製品の針尖の「切れ味」です。そして、このように品質と機能性の高い短針が登場したことで、顔面部に対する圧倒的に円滑な刺針を実現することができたことです。「針体が短い」「鍼管が付属していない」「針尖の切れ味が優れている」 この3つの要素を備えた従来の鍼灸針の常識を覆す鍼灸針と出会ったことで、北川毅の技法と臨床は実際に大幅に変わる結果となりました。そして、その結果として帰結した「結論」は、現代の一部の鍼灸針には「もはや鍼管は不要である」ということです。「二指推鍼法」は、セイリンのDタイプの登場によって実現した新しい刺針法であり、換言すれば、新しい鍼灸針の機能を最大限に引き出すために考案した技法です。

鍼灸針の種類は、その「機能性」に起因して施術に対して大きな影響を与えます。同様に、製造技術の進歩による鍼灸針の「機能性の向上」ということも、施術や技法に影響する可能性を含んでいます。管鍼法が考案されたのは江戸時代のことです。そして、現代の鍼灸針の製造技術は、当時に比べて大幅に進歩しています。「新しい鍼灸針」は、それを使用するための「新しい技法」を検討することによって、その品質と機能性をより以上に活かすことができるでしょう。現代において、一定以上の進化を遂げた新しい鍼灸針を使用する場合には、江戸時代に考案された刺針法は、「もはや古い」というのが北川毅の見解です。また、前述した通り、顔面部の形態は凹凸が顕著であり、横刺や斜刺で刺針する場合も多いことから、顔面部に対する刺針では、管鍼法が必ずしも理想的な方法であるとは言えません。さらに、穿刺の過程において、管鍼法では鍼柄の後部をと叩打する弾入という方法が用いられていますが、頭部や顔面部では、弾入の「トントン」という感覚を不快に感じる人も少なくないようです。
刺針という行為において、常に大きな課題となってきたことの一つは「穿刺」と「穿刺による痛み」です。いかにして、疼痛を与えずに円滑な穿刺を行うかということが、今も昔も刺針の重要な課題であるということです。日本の「管鍼法」や中国のいわゆる「投げ入れ」による「速刺法」は、いずれもその時代の鍼灸針を対象として、この課題に対して術者の技術面からの取り組みによって獲得された技法です。一方、セイリンDタイプでは、管鍼法や速刺法を用いなくても、円滑で疼痛の少ない穿刺と刺入を実現することができます。現代において、「穿刺」と「穿刺による痛み」に関する課題は、進化を遂げた現代の鍼灸針の道具としての品質面と機能面から、をおおよそ解決されていると言っても過言ではありません。